顕微鏡は細胞など光を通す対象を見る「生物顕微鏡」と金属表面など光を通さない対象を見る「金属顕微鏡」に分けられます。それぞれいくつかの照明法があり、同じ対象でもまったく違った見え方をするのでそれぞれの特徴を把握して目的に合ったものを選ぶ必要があります。ここでは生物顕微鏡を使った細胞観察の照明法についてご紹介します。
【明視野[BF]BrightField・[H]Hell】
もっとも基本的な照明法で透過光像を見ることになります。ケーラー照明を行い、コンデンサー絞りをきちんと扱うとことで欲しい情報を得ることができます。
この写真のように葉緑体の入っている植物プランクトンの観察には向いていますが、動物細胞のように水っぽいものを見るのは得意ではありません。一番上の写真はタマネギの細胞で比較したものですが他の光学系と比べて細胞内の構造ははっきりしていません。
実は細胞内がよく見えない例として撮影を始めたのですが、思いがけず細胞核が見えているのはツァイスレンズの性能に追うところ大ということでしょうか。
シンプルである分、変に画像を加工したような感触がないのが魅力です。
【暗視野[DF]DarkField】
標本を斜め方向から照明する事により標本の背面が暗くなり、標本によって散乱した光を観察します。具体的にはコンデンサーレンズの中央を黒く覆い、レンズ周囲からの光を利用します。
被写体が闇に浮かぶように見えて神秘的な印象を与えることも多々あります。
コンデンサーを通る光の中心部分をカットすることになるので光量はかなりロスします。
【位相差[Ph]PhaseContrst】
位相差観察とは光の回折や干渉を利用した観察方法です。細かい説明は省略します。
一番の上の写真で見るとそれぞれのほぼ中央に丸い構造=細胞核があるのですが、これは位相差が得意とする対象の一つです。他にも細胞内の顆粒がはっきりと見えています。
ここではあえて明視野で得たホワイトバランスで撮影していますが、映像作品として撮影する場合は対象のない背景でホワイトをとりグレーを基調とします。
【微分干渉[DIC]】
微分干渉では偏光板と特殊なプリズムを光路に挿入することで立体感を得ることができます。このため位相差とは違った形で細胞核が表現されます。
鞭毛などを見るときに有効なのですが、偏光板を使うことで光量をロスするため拡大率を上げて動きの速い対象を撮影するとなるとカメラ側に高感度での性能が求められます。
この写真は位相差同様、明視野で得たホワイトバランスで撮影しているため背景が青っぽく見えますが、映像作品として撮影する場合は青い背景の部分でホワイトバランスをとってグレーを基調とした像を得ます。
【光学について学ぶには】
光学系などを学ぶには以下のページが参考になるかと思います。
【ZEISS・Basic Microscopy:http://zeiss-campus.magnet.fsu.edu/articles/basics/index.html】
【日本顕微鏡工業会・顕微鏡の基礎:http://www.microscope.jp/knowledge/index.html】
【ニコン・顕微鏡の基礎知識:http://www.nikon-instruments.jp/jpn/learn-know/microscope-abc/index.html】
【オリンパス・顕微鏡を学ぶ:http://www.olympus-lifescience.com/ja/support/learn/】