これが私の顕微鏡④ Nikon・S型

出前スコープとしてNikonG型を使うようになってから見直したのがNikonS型で1956年から発売されたものです。G型と比べるといろいろとメリットがあり日常観察用として使い始めたのですが、その後に壊れていた上位機種のL型を修理したのでバトンタッチとなりました。S型はL型より小さいので整備し直して自宅に連れて帰るつもりです。
2020年時点でNikonが販売しているのはECLIPSEシリーズ(無限光学系)ですが、話の都合上、その前をオプチフォト世代(バイオフォト、ダイヤフォトなどを含める)とするとS型はその前の世代でG型やL型を同世代の仲間に含めます。
何でわざわざ古い顕微鏡を使うのか? それは単なるノスタルジーではありません。その後の世代の顕微鏡にはないメリットがあるからです。(2020.4.11~2020.5.9改)

【とにもかくにもボディが丈夫】

自動車に象徴されるようにモノを売るためには壊れるように作るというのが今どきの考え方です。顕微鏡では光学性能は少しずつ向上しているものの機械精度や耐久性は格段に落ちてきていると感じます。
S型は1950年代後半~1970年前半頃に作られたものなのでユーザーの使い方次第ではダメになってしまったものもあるでしょうが、逆に今使えているものならこの先もずっと使えるだろうと思えます。要は中古で安価に手に入りながらもそれなりの性能を発揮してくれるということです。

【対物レンズはオプチフォト世代のCF系に交換】

S型世代からオプチフォト世代に変わったときNikonはレンズの光学設計を大きく変えました。これがCF系です。顕微鏡はレンズで決まる。同じレンズを使えば光学性能も同じになるのです。
ただしボディバランスは微妙です。S型世代の対物レンズはCF系より小さかったのでそれに合わせてボディも設計されています。CF系レンズは大型化したので取り扱いはちょっと面倒になりました。

【偏斜コンデンサーはS型世代でないと使えない】

S型世代のメリットは偏射コンデンサー(左)が使えることです。これはオプチフォト世代には使えません。私のような顕微鏡写真家(?)にはとても重要なことです。
逆にオプチフォト世代の位相差コンデンサー(右)はS型世代に使えます。実際には位相差レンズに付け替えるが面倒なので位相差観察にはオプチフォトを使っていますが。

【鏡筒もいろいろ】

この時代の鏡筒にはいろいろなものがあります。一番左の単眼鏡筒は初心者向けなのでここでは省略しますが、2番目の単眼直筒はカメラ側が素抜けになるので撮影時にはガラス部分による像の劣化がありません。
三眼鏡筒も3種類もっているのですが左は双眼とカメラに常に振り分けられているものです。厳密な機能はさておき三眼鏡筒の中では最軽量なので出前スコープに使っています。真ん中は双眼のみとカメラのみの2段切り替え、右はさらに振り分けのついた3段切り替えです。固定標本をじっくり撮影するなら2段切り替えでいいのですが、生きて動いているものを追いかけるときには振り分けが必要になることがあります。

【G型(下位)L型(上位)との使い分け】

左のG型は下位機種で取り付けられる対物レンズは3本でステージ交換もできません。ただボディはアルミで一回り小さいため圧倒的に軽量なので持ち歩けます。おまけにしレンズやコンデンサー、鏡筒は共通なので普段使っている光学系が出先でも再現できます。
右はの上位機種のL型です。レボルバーは交換も可能で対物レンズを5本装着。鏡筒やステージなども応用観察用に改良されています。
ちなみに私のL型(L−Ke)はケーラー照明ができるよう照明機能が内蔵されて大きく重くなるので仕事場固定。これを機にS型を自宅に連れて帰るつもりです。