顕微鏡撮影と機材|オリジナル顕微鏡① 一家に一台・あなたも顕微鏡オーナーに!

(2015.9.5)

OLYMPUS DIGITAL CAMERAよく見える顕微鏡が欲しいならそれなりのお値段がして当たり前。私の撮影用AXIOPLANもカタログ価格ならン百万万円という代物です。(もちろん購入価格ではありません)でも明視野を基本に80点を目指すなら話しは別。
ちょっとした努力とわずかな(?)投資でかなり良く見える顕微鏡が手に入ります。
この元ネタはミクロワールドサービス(MWS)・奥修さん。顕微鏡友の会(仮称)の懇親会ではあまりの見えのよさにスペシャリスト達を思わず唸らせました。
「顕微鏡は高いから」とコストを理由にあきらめている方はこれを参考に入手を考えてはいかがでしょう。

【基本コンセプト:安くて軽くて良く見える!】

私にとってちょっとした日常作業で常に撮影用の顕微鏡を使うのはちょっと億劫。だからと言ってあまりにものが見えない顕微鏡も論外。そこでちょっとパクってアレンジを加えて使い始めたのがこの顕微鏡です。
ポイントは「有限光学系」で組むこと。対物レンズのネジ径、接眼レンズの径、両方のレンズ間の距離などに統一規格があるのでメーカーを問わず組み合わせて使うことができます。
[安く]  写真の顕微鏡に限れば、本体、LED関連、メカニカルステージで合わせても1万円未満。他にも2台の中古顕微鏡と部品や工具も購入しましたが全部合わせても投資総額は2万円未満です。工作に費やした時間もせいぜい3日ほど。もちろんある程度クオリティの高い手持ちのレンズがあったからですが、中古品を探せばいろいろと見つかるはずです。
[軽く] これは「小さく」にもつながります。顕微鏡友の会のSさんは高級顕微鏡を手に入れたものの「妻に叱られるから持って帰れない」と会社に置いていますが「この顕微鏡ら家でも観察できる」と喜んでいます。片手で持ち運ぶことができるこの重さなら連れて出かけることも可能。近々フィールドでの観察~撮影にも使えるように加工しようと計画しています。
[見え] これについてはレンズ次第。良いレンズを付ければ驚くような画質も得られます。安い中古レンズを探すのもこの顕微鏡の楽しみの1つです。

【鏡体選び】

私は写真のような単眼(=片目で見る)で対物レンズと接眼レンズが直線上に取り付けられるものを条件に探しました。双眼や単眼でも対物レンズに対して斜めに見るものはプリズムが入りますが安い機種では画質低下の原因になります。いずれカメラを取り付けるときにも邪魔する可能性があるからです。
鏡筒で1番問題になるのはフォーカス部分でしょうか。実物を見て確かめてから購入できれば良いのですが、ネットの中古品などで当たり外れがあるのは避けられません。

【対物レンズ】

ORG_MS_104顕微鏡の「肝」は対物レンズです。画質の善し悪しの大半は対物レンズの性能が大きく左右します。私は以前メインとして使っていたオプチフォト用のプランシリーズを利用していますが逆に言えばこのくらいのレンズがあるからこそこの顕微鏡を使い始めたというところがあります。ミジンコや珪藻を観察してあまりに細かいところまで見えるのでビックリしたものです。
開口数が大きく各種収差を補正した高級品を使えばより美しい世界が広がります。

【接眼レンズ】

ORG_MS_105対物レンズに合わせて接眼レンズもオプチフォトのCFWN10×に交換しました。元々ついていたものも明るさ、滲み、歪みなどの面ではそれほど悪くはなかったのですが、決定的に違うのは視野の広さです。覗いた時に明るく見える範囲がまったく違います。
また覗く時にレンズ直径が大きいことも見やすさにつながります。

【照明&コンデンサ】

ORG_MS_106軽さを優先すると光源内臓はNG。あえてミラー付きのものを選んでそれを外し、自作のLED照明を取り付けました。フィールド使用も想定してACと電池の切り替え可。
動画撮影のため明いLEDを使っているため観察時にはNDフィルターを使います。
顕微鏡の知識のある方なら「コンデンサーは?」と疑問に思われるかもしれませんが、代わりに拡散版を使うだけでかなり良く見えます。もちろんこれは低倍でのお話し。対物100倍はフォーカスの精度からしてこの顕微鏡で見るのは無謀かと…。
 
ミクロワールドサービスさんのホームページでは拡散版についても詳しく紹介されています。パクった私が偉そうに解説する訳にはいかないのでそちらをご覧ください。簡単な作業で顕微鏡がグレードアップします。

【ステージ】

ORG_MS_107安い顕微鏡を選ぶとプレパラートはクリップで押さえるだけ。位置合わせは手で微調整することになります。それでは使い勝手が悪いので簡易メカニカルステージを買って取り付けました。
新品で送料込み5,000円近くとこの顕微鏡の中では最大の投資額ですが…過大な期待はいけませんね。今後の修正課題の1つですが、現状でもないよりはずっといいです。

【撮影装置】

OLYMPUS DIGITAL CAMERA顕微鏡にカメラを取り付けるアダプタもいろいろ売られていますが、組み合わせによっては付かないものもあるので要注意です。私もV社製品を購入しましたがページトップの写真の初号機には使えません。まあ自宅では撮影専用機があるので特に問題にはなりませんが。
展示会場用の零号機、持ち歩き用の弐号機では使えます。

ちなみにこのアダプタには太い接眼レンズ(CFWN10×も)は入りません。カメラとの接続はTマウントになっていますが単純な変換だけでは周辺がケラレてしまうので延長チューブなどを使って適当な距離をとる必要があります。

【まとめ】

私が最初に顕微鏡を使ったのはおそらく小学校低学年の頃に父が買ってくれたものかと思います。その後、大学(理科系それも生物系です)まで顕微鏡を覗く機会は何度もありましたが「奇麗だ」という印象をもったことはなく、仕事でキチンと調整したものを見せられてはじめて興味をもちました。
私自身はこの顕微鏡には「お金も手間もかけずに80点」で良しとしていますが、ミクロワールドサービスさんのホームページにあるように、その気になればこれをベースにさらなる画質アップは保証されています。そうそう何台も顕微鏡をもてない方にはもう一歩進んでさらに美しいミクロの世界を楽しんでいただきたいものです。